中国針灸治療:バセドウ病・男性不妊症・針灸適応症全般
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泌尿器系の針灸治療
男性不妊 【目次】 Page1 Page2 Page3 Page4 Page5 Page6
第3章.不妊の診察

3−3.精液検査
WHOによる精液検査の正常値を表3-1に紹介する。臨床上は1つの項目だけが異常であることは少なく、通常は複合した検査結果が得られます。また精液検査の結果は同一人物でもばらつきがあるので、最低2〜3回行なう必要がある。

表3-1:精液検査のWHO基準
表3-1:精液検査のWHO基準

以下各項目についてその内容を概括します。
・精液量;精液は精漿と精子の混合物で、精液量過少は主に精漿量の減少が反映しているものです。精漿は精巣上体・精管・精嚢腺・前立腺と尿道球腺により分泌される混合液体であり、その中で前立腺と精嚢腺の分泌物が最も多い。つまりどのような原因で生じた性腺分泌減少はみな精液生成障害と精液量減少を引き起こします;別の面として、精液の排泄障害も射精量減少を引き起こします。まとめると精液量が2.0ml以下の原因は、低アンドロゲン・射精障害・射精管閉塞・精管欠損症等が考えられます。
 また、精液の液化も不妊と関係があり、精液不液化と精液不凝固がある。 精液不液化とは、精液が体外に排出されて30分経過してもゼリー状に凝結したまま液化しない、或は1時間以上経過して液化を開始する精液液化遅緩の総称です。正常な男子の精液は射出時に一定粘度の液体を呈し、その後すぐにゼリー状に凝固し10〜20分後には液化を開始して稀薄な液体に変化する。もし精液凝固が変化しない或いは液化が不完全なら、精子の活動能力は大幅に束縛され精子が子宮に進入して受精する能力は減弱或は抑制されるので不妊症となります。そのメカニズムは、前立腺が産生する蛋白分解酵素・線維素溶解酵素およびその他の精液液化因子により、精嚢腺が産生している凝固因子を破壊して液化が行なわれます。したがって不液化の原因は、前立腺炎による液化物質分泌低下・テストステロン分泌低下により前立腺機能低下を引き起こす・前立腺の先天性疾患等があります。
 精液不凝固とは、精液の射出時にゼリー状を呈さず直接液化状態であるもので、甚だしくは稀薄で水の様な精液を指しています。正常男子の精液は体外へ排出された時に空気に触れて凝固過程を起こし、約15分後には液化を始めるものであります、もし精液が終始稀薄なものは精子の活動に対し影響を及ぼし不妊となる。精液不凝固に対する研究報告は多くなく、一般に精液中には凝固成分と液化成分が存在しており、両者が相対的に平衡であれば精液の正常な凝固と液化過程は保証されます。精液の凝固は精嚢腺が分泌する凝固蛋白によって完成するものであり;液化は前立腺が分泌する蛋白分解酵素による結果です。先天的精嚢欠如或は発育不良、或は感染を受け炎症が存在している時には精嚢腺が分泌する凝固蛋白の産生は不足するので、精液不凝固を引き起こし;一方、前立腺機能亢進或は慢性炎症で前立腺の分泌が増加した時は液化成分は相対的に優勢となり、精液中の凝固と液化の平衡状態は打ち壊され精液不凝固が生じます。したがって附属性腺の炎症・内分泌異常および生殖器官の先天的な原因はすべて本症の病因となります。


 ・精子濃度;精子濃度が20×106/ml未満を乏精子症といいますが、精子の運動性・形態が正常であれば精子濃度が5〜10×106/mlでも妊孕性は期待できます。精子濃度の計測はMakler精子計算盤を用いて行なわれ、その他に精子運動率や精子運動性を目算法で評価します。

 ・総精子数;総精子数は精液量×精子濃度によって得られます。

 ・精子運動率;運動精子の測定はMakler計算盤の100マスの中から10前後のマスにある精子の不動精子と運動精子数をカウントして、その比率を運動率とする。運動精子の分類は以下の表3-2となっている。

表3-2:運動精子の分類

運動精子の分類

A

B

C

D

速度の速い
直進運動精子

速度が遅く
運動の直線性が
不良な精子

尾部の振震を認めるが前進運動していない精子

非運動精子
精子運動率が正常値未満のものを精子無力症という。

・正常形態精子;精子の形態異常は精巣に温度・ホルモン・血流障害・薬物などの影響が及んだ時に、幼若細胞や未熟精子が現れます。精子形態の観察は染色法により行なわれ、100または200個の精子を観察し次式により計算する。
精子奇形率(%)=(奇形精子数/全精子数)×100
 精子の形態分類としてKrugerらのStrict Criteria(表3-3)とWHOの精子形態異常の分類(表3-4)を紹介します。
 Strict Criteria(表3-3)は正常精子の厳しい判定基準を各部(頭部・頚部・中片部・尾部)について示しています。

表3-3:Strict Criteria

Strict Criteria

頭部
・なめらかな楕円形。
・明瞭な先体が頭部の40〜70%を占める。
・大きさは長さ3〜5μm、幅2〜3μm*
・頭部の幅は長さの3/5〜2/3**
・従来言われていたborderline normal head formは異常とする。

頚部
・長軸方向に結合

中片部
・細長く、長軸方向に結合。
・幅は約1μm、長さは頭部の1.5倍。
・頭部の1/2より大きなcytoplasmic dropletがない。***

尾部
・中片部よりやや細く、長さは約45μmで均一。
・coil状を呈さない。

注*:大きさは染色法により異なります。表の数値はPapanicolaou染色によるもので、Diff-Quik染色によるものは長さ5〜6μm、幅2.5〜3.5μm、WHOマニュアル第3版では長さ4〜5.5μm、幅2.5〜3.5μm。
注**:WHOマニュアル第3版では長さは幅の1.5〜1.75倍としている。
注***:WHOマニュアル第3版では1/3より大きなcytoplasmic dropletがないとしています。

表3-4:精子の形態異常の分類

精子形態異常分類(WHOマニュアル第3版)

頭部異常
large head,small head,tapering head(先細頭),pyriform head(洋梨形頭),amorphous head(無定形頭),vacuolated head(空胞が頭部の20%以上を占める),double head

頚部異常
中片部異常
absent tail(free or loose head),non-inserted or benttail(尾部が頭部の長軸に対し約90度に結合),distended(膨張した)/irregular/bent midpiece,abnormally thin midpiece

尾部異常
short tail,multiple tail,hairpin tail,broken tail(90度以上に屈曲),irregular width tail,coiled tail,tail with terminal droplet(尾部末端に滴がついたようなもの)

 ・精子生存率;死滅した精子がエジオンY液に染色されることから算出できます。 

 ・白血球数;本来精液中には白血球は無く、高倍率で1視野当たり5個以上あると膿精症となる。

 ・抗精子抗体;Immunobead test,MAR testにより評価する。


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