中国針灸治療:バセドウ病・男性不妊症・針灸適応症全般
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泌尿器系の針灸治療
男性不妊 【目次】 Page1 Page2 Page3 Page4 Page5 Page6
第1章.不妊の定義
定義:性的に成熟した夫婦が正常に性交渉がありながら、1年以上子どもができない状態。 参考:1年以内に自然妊娠が成立するのが約85%。不妊原因は、女性側のみ41%;男性側のみ24%;男女双方24%;不明11%。1
第2章.不妊の原因
男性不妊の原因は、精子の生成から始まって射精をするまでの範囲における異常によって生じます(表2-1)。
男性不妊の原因となる領域 表2-1
 簡単に言うと精子が造れない・正常な精液が出来ない・勃起しない・精子が射出されない等が不妊の原因となります。もう少し詳しく説明すると次の5項目に分類されます。
(1)造精機能障害;精巣で正常な精子が造れない。
(2)精子輸送路通過障害;主に精管の閉塞や切断により精子が送られない。
(3)副性器障害;副性器とは精巣上体・精管・精嚢・前立腺である。
(4)性機能不全;インポテンスや射精障害を指す。
(5)精子機能異常;精子鞭毛運動や免疫学的異常そして授精能低下を指す。 さて、これら5項目の原因をさらに詳しく知ることで針灸臨床における適応をはっきりさせましょう。
2ー1造精機能障害(不妊症の中で最も多い原因)
・原因不明の特発性精子形成障害;精巣内の男性ホルモンやFSHに対する受容体に異常があるとする報告がある。造精機能障害の6割を占める。
 ・精索静脈瘤;障害機序については精巣温度上昇による造精障害説や有害物質(プロスタグランディンなど)の逆流説などがある。発症部位はほとんどが左側。手術により妊娠の可能性が期待できる。
 ・停留精巣;出生時には精巣は陰嚢にあるが、1〜2才までに精巣固定術を施さないと造精機能は低下する。もし思春期までに行なわないと造精機能は失われる。両側の停留精巣の場合は適切な時期に手術を行なっても70%は不妊となり、片側では手術により60〜80%は妊娠可能となる。
 ・内分泌障害;続発性精巣機能障害つまり視床下部や下垂体の障害による低ゴナドトロピン性性腺機能障害。視床下部障害ではLH-RH分泌障害;下垂体障害ではLH,FSHの分泌障害となる。また、下垂体腫瘍によるプロラクチン(乳腺刺激ホルモン)の分泌過剰によりテストステロン産生低下を引き起こす。
 ・染色体異常;ほとんどがクラインフェルター症候群で、核型は47XXYを示し、精巣萎縮・無精子症・女性化乳房が見られ、血中テストステロンは低く、LH,FSHは異常に高いものが多い。
 ・物理化学的因子;放射線照射、高温度環境、ウィルス感染、カドニュウムや鉛の重金属、有機溶剤エチレングリコールエーテル、アルコール、喫煙等。その他薬剤による造精機能障害もある。例えば、癌の科学療法(シクロホスファミド等)、潰瘍性大腸炎(スルファサラジン)、蛋白同化ステロイド剤等である。
 ・精巣炎;成人してからの急性耳下腺炎(おたふくかぜ)の20%で精巣炎を合併して、無精子症または乏精子症となる。急性耳下腺炎や精巣炎の既往を問うのは大切な問診項目である。
 ・その他;外傷や精巣捻転症により造精機能が低下する。ともに片側だけの障害でも免疫学的なしくみ(抗精子抗体)により健側の精巣にも造精機能障害が生じる可能性がある。また精巣捻転症発病後6時間以内に整復手術をしないと壊死してしまう。
2ー2精子輸送路通過障害
輸送路通過障害には精巣上体・精管・射精管の閉塞や狭窄、欠損がある。
 以下、それぞれの部位についてその原因を紹介します。

障害部位

原因

精巣上体
原因不明(最も多いケース)
急性精巣上体炎や外傷
精管閉塞に伴なう二次的閉塞
先天的精巣上体発育不全
Young Syndrome(注1参照)
(注1)Young Syndrome:精巣上体管頭部の特発性閉塞による無精子症と慢性副鼻腔炎や慢性気管支炎そして気管支拡張症などを合併する。

障害部位

原因

精管
鼠径ヘルニア根治術による閉塞
先天性精管欠損症
パイプカット

障害部位

原因

射精管
尿道炎や外傷
先天性の閉塞や狭窄
2ー3副性器障害
副性器は精巣上体・精管・精嚢・前立腺を指していますが、副性器障害と言う場合は主に精嚢あるいは前立腺の炎症によるものを指している。この炎症により精液の分泌異常や免疫反応により、精子運動能や精子受精能が低下して不妊となります。
2ー4性機能障害
性機能障害にはインポテンス(ED)、射精障害があります。
 インポテンスの原因については、機能的インポテンス・器質的インポテンス・混合型インポテンスに分類されています。機能的インポテンスとは勃起機能正常でも精神的要因等により性交不能となるもの;器質的インポテンスとは陰茎異常・神経伝達異常(中枢性・末梢性ともに)・陰茎への血管系異常・性衝動に関係する内分泌異常によるものを指す。
 射精障害には精液射出障害と逆行性射精があります。精液射出障害とは勃起は正常でも性交して精液が射出されないものを指し、その原因は脊髄損傷・後腹膜リンパ節郭清術等による伝達神経障害・精神的素因等があります。逆行性射精は内尿道口閉鎖不全により起るもので、完全逆行性射精と不完全逆行性射精があり、完全逆行性射精は内尿道口が閉じないで前立腺の外側にある筋肉が閉じてしまい精液は膀胱内ヘ逆行するものを指します。不完全逆行性射精は内尿道口と前立腺外側の両方が開いているもので、射出される精液量が少なくこれも不妊の原因になります。この逆行性射精の原因は糖尿病や骨盤内の手術によるもの、そして原因不明なものが臨床上多いです。
2ー5精子機能異常
精子機能異常とは精子自身に受精する能力がないもので、以下のような場合があります。
 ・精子の鞭毛構造異常;鞭毛の環状構造に欠陥があり精子運動は失われ受精する場所へ到達できず不妊となる。また精子鞭毛運動障害がある場合、慢性副鼻腔炎、気管支拡張症、再発を繰り返す上気道炎などを合併するimmotile cilia syndromeがあります。
 ・抗精子抗体;外傷や感染によって抗精子抗体ができて、精子の運動性や精子数を減少させることで不妊となります。
 ・精子受精能低下;一般的な精液検査では全く異常がなく、精子機能検査(後述する)で異常が見られるもので、主に先体反応の能力が低く卵子へ侵入できず不妊となるものがあります。

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