|
|
第3章.不妊の診察
|
3-5.精巣生検
精巣生検とは無精子症や高度乏精子症に対し、精巣の精子形成能を評価するために行なわれるものであります。またICSI(卵細胞質内精子注入法)が行なわれるようになってからは、精巣生検を単独ですることは少なくなり、ICSIのためにTESE(精巣内精子抽出術)と併せて行なわれることが多い。
採取した精巣組織の評価法としてJohnsen score count(JS)法を紹介します。この方法は50〜100個の精細管を下表の基準で点数化して平均値を求めて評価します。正常造精機能の平均値は9以上です。
|
表3-8:Johnsen score(JS)
スコア |
精細管組織像 |
10 |
多数の精子を認める完全な造精機能。精細胞の層は厚く、規則正しく配列しており、中心に管腔がある。 |
9 |
多数精子は認めるが、精細胞の配列が不規則で管腔が狭い。 |
8 |
精細管内に精子が5〜10。 |
7 |
精子を認めず、精子細胞が多数ある。 |
6 |
精子を認めず、精子細胞が5〜10。 |
5 |
精子・精子細胞を認めず、精母細胞は多数。 |
4 |
精子・精子細胞を認めず、精母細胞は数個。 |
3 |
精祖細胞のみ。 |
2 |
精細胞欠如、セルトリ細胞のみ。 |
1 |
精細管内に細胞成分を認めず。 |
|
3-6.精管・精嚢造影
閉塞性無精子症が疑われる症例で行なわれます。造影の他に超音波検査も行なわれます。
3-7.染色体検査
低アンドロゲン症状や精巣萎縮のある無精子症に対して行なわれます。
3-8.精子機能検査
精子や精液の量的検査の他に、精子の質的検査つまり精子自身の受精能を調べるのが精子機能検査です。その内容は、主に精子の先体反応能力や活発な精子運動能力を検査します。
精子機能検査には、ハムスターテスト・アクロビーズテスト・頚管粘液貫通テスト・HOSテストがあります。
ハムスターテストとは精子の卵への侵入能を調べるテストで、透明体を除去したハムスター卵への精子侵入率を評価します。この評価はIVF(in vitro
fertilization;体外受精)の成績ともよく相関する。
アクロビーズテストは精子の先体反応と運動性を評価するテストで、精子と、先体反応を起こした精子に特異的な抗体を結合させたMH61ビーズとの抗原抗体反応による凝集を観察する。
頚管粘液貫通テストは精子の直進運動能力を評価するテストで、牛頚管粘液を使い90分間で精子最大到達距離(貫通力)を測定する。30mm以上が正常で、20mm以下が貫通力低下とする。
HOSテストは低浸透圧溶液に精液を入れて、精子尾部の膨化を観察する。精子機能の悪い未熟精子や奇形精子は精子細胞膜の膨潤となり、IVFの受精率の予知と関連すると言われています。
|
第4章.精索静脈瘤診断
4.精索静脈瘤診断
精索静脈瘤の診断は、立位での安静時と腹圧負荷時の両視触診で行なう。視触診で診断できる顕性静脈瘤に対しては1〜3度の分類(表4-1)があります。
確定診断するには、静脈内血の逆流を観察するカラードップラー超音波断層法、陰嚢部皮膚温の上昇をみる赤外線サーモグラフィーなどがあります。
|
表4-1:精索静脈瘤の分類
分類 |
診断 |
1度 |
立位で腹圧負荷を加え、はじめて静脈の拡張を触知できる。 |
2度 |
立位で静脈の拡張を容易に触知できるが、視診では分らない。 |
3度 |
立位時に陰嚢皮膚を通して大きく怒張した静脈瘤が見え、
容易に触知できる。 |
|
|